大阪市中央区に新たな「がん治療」施設が開設されることになったようです。
重粒子線で癌細胞を破壊することを目的とした治療施設で、国内では千葉、横浜、前橋、兵庫県たつの市、佐賀県鳥栖市に続く6目の開設になるよう。
重粒子線でのがん治療は、従来の放射線治療に比べて回数も照射量も少なくなり、患者の体への負担も減る方法として近年注目を浴びています。
重粒子線による治療とはどのようなものなのか?
from:Shafaqna English
素人には分かりにくい「重粒子線」照射治療についてですが、以前にこのブログでも取り上げたことがあり、そこで詳細について触れているので、今回はそこから必要な情報をピックアップしてみます。
上記の記事が国の研究機関と精密機器メーカーが協力して新たに開発した「量子メス」治療についてのまとめです。
「量子メス」とは重粒子線で患部を施術するということになっており、今回の「重粒子線治療」とほぼ同一の内容だと思われます。
では以下に概要をまとめてみましょう。
「量子メスと重粒子線」
・量子メスを構成する重粒子線とは、電子より重い粒子のことを指す
・重粒子線を直接がん細胞に照射することで、その死滅を狙った治療法が「量子メス」という
・的確な位置でがん細胞を狙い撃ちにできる
重粒子線治療と放射線治療の違い
放射線の場合
・放射線治療では、照射した放射線は体の表面で広がるが、奥深くに入るにつれて威力が弱まる
・深い場所のがん細胞を破壊しようとすると、表面近くの正常な細胞まで傷つけるリスクを負う
・これを防ぐために、多方面からの弱い照射で、正常な細胞を傷つけないように気をつける必要がある
・放射線は、がん細胞を突き抜けて進む傾向があるので、その背後の正常な細胞も傷つける可能性もある
重粒子線の場合
・体内に入っていくエネルギーの強さを調節できるので、がん細胞の位置で正確に照射することが可能
・がん細胞の近くでエネルギーを上げたり、細胞の場所に正確に照射を止めることも可能なので、他の正常な細胞を傷つけずに、安全に目的の癌細胞だけを死滅させることもできる
・こうした重粒子線の照射エネルギーを調節するために必要なのが「加速器」
・運用のコストと普及を進めるために、従来の大型の加速器の「小型化」が急がれている
<<ポイント>>
・放射線治療と違って、精密な照射コントロールが可能な重粒子線治療
・照射量をコントロールすることで、病巣だけを死滅させ、正常な細胞を傷つけない利点がある
・重粒子線を運用するためには加速器が必要であり、それを小型化することで、よりコストの低い重粒子線治療を可能にする
from:Berkeley Lab News Center
これが前回記事からまとめてみた、私なりの「重粒子線」への認識とその詳細です。
専門家でも関係者でもないので、ひょっとしたら認識不足からくる表現の誤りや、知識の不完全な理解があるのかもしれませんが(その際はすいません)、少なくとも重粒子線による「がん治療」は従来の放射線による治療に比べても、格段に安全で確実な成果が期待できるということは、ほぼ間違いのない事実だと思います。
まとめ
記事の主要な引用元になったリンク先メディアの最後に、
財団は「照射自体には痛みや熱さがなく、従来の放射線治療と比べて必要な照射回数や日数も少なくて済む。仕事や日常生活をしながら通院治療ができる」としている。
とあり、がん治療による苦痛と時間的な拘束を大きく緩和する「重粒子線」の利点がこの言葉に凝縮されていると思いました。
人体を構成している物質成分以外のものを、たとえ治療目的とはいえ、メスや放射線といった”もの”が自分の体の中に入ってくるのは、多くの人が抵抗を感じることだと思います。
そこにさらに「入院」という肉体的・金銭的な拘束が関わってくることで、その抵抗感はさらにアップしてしまいますね。
from: Truebeam
そうした不安や心配をできるだけ少なくした「重粒子線」による治療は、これからの「がん治療」の主流になっていくことでしょうし(現在すでにそうなのかもしれません)、そういった最新の治療施設が、大阪という自分が住む関西地域に開設されること、その目玉である重粒子治療がこの10月にも開始するということで、自分や自分の家族、この地域に住む多くの人にとって、かなりな安心材料になったなと感じています。
大阪重粒子線センター | Osaka Heavy Ion Therapy Center
なんといっても、通院による治療で「がん」が治るかもしれないのですから、これは”いざ”という時には本当に心強いことですよ。
このほかにも遺伝子治療やAIによる診断など、新たな治療法が次々に出現している現在は、まさに人類にとっての次なるステージへの序章といえるのかもしれません。
今回のニュースが、地域に住む多くのがん患者さんにとって大いなる福音となることを願っています。